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自己責任の国の『現実』は?

サンタモニカの似顔絵描き
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2月5日から13日までの日程で、ASK(アルコール薬物問題全国市民協会、通称「アスク」)が主催するアメリカの依存症治療施設を訪ねる研修に参加した。
この研修は、依存症の外来治療では全米随一といわれている施設「メイトリックス研究所」(カリフォルニア州ロサンゼルス)の概略を学ぶのがメインで、日本全国から精神科医をはじめカウンセラーや福祉関係者、また依存症を克服している方など、私を含め8人が参加した。 アルコール依存症は、日本では入院して治療するのがおもな方法だが、先進国アメリカでは通院でも治療しているということで、参加者は強い興味を持ち治療にすぐにでも役立つ知識を求めている方も多かった。
日本からはアスクの副代表であり、(株)アスク・ヒューマン・ケア取締役・研修相談センター所長でもある水澤都加佐氏が同行した。
水澤氏は30年ほど前からアメリカでアルコール・薬物専門のソーシャルワーカーやカウンセラーとして、さまざまな援助技術を学び著書や翻訳なども多く、研修期間中はアメリカ人の案内人とともに私たちの案内役をしてくれた。
水澤氏は以前、宮古福祉保健所の招きで講演のために来島したことがあり、私はそのことがきっかけで水澤氏を知るようになった。
保険会社が治療方針を決める
5日午後2時55分に成田空港を出発して、約10時間後(現地時間、5日午前7時30分)にロサンゼルス空港に到着し、その日はフリー、翌日は市内観光に周った。ゆったりした日程をとってあったのは、おそらく17時間の時差に慣れるためもあったのだろうと思う。
ロス市内を観光しながら、案内人のデイビット氏と水澤氏が、時折アメリカやロスの社会情勢やアディクション(飲酒、薬物、食べ物、ギャンブル、買い物、仕事など習慣的で自己破壊的なのめりこみ、依存。=嗜癖・しへき)について説明してくれた。
それによるとアメリカの依存症治療の場合、入院はたいてい28日間で1カ月以上になることはないという。 日本では依存症治療で入院する場合、半年を超える場合も多く、28日間というのはきわめて短期間だそうだ。
なぜ短期間かといえば、アメリカでは保険が民間企業のものしかないため、治療方針などを決めるのも、すべて費用の観点から保険会社が決めるからだという。
また、アメリカでその28日間にかかる費用はおよそ500万円くらいだという。日本ではせいぜいその10分の1くらいだそうだ。
自己責任の国アメリカでは、経済力のある人だけが治療を受けられるというわけだ。
ベトナム戦争が残したもの
デイビット氏によると、アメリカではアディクションによって受ける損害の額をはじき出しているらしく、その金額はおよそ3兆5千億円になるという。
どうやってその額を計算できるのかも不思議だったが、アメリカがそれほどアディクションについて問題意識を持っているということも、日本とは根本的に違うのかもしれないと思った。
ロスの市内を車で走っているとき、芝生のグリーンが目に美しい広大な敷地が見えた。聞けばそれは、ベトナム戦争で亡くなった兵士の墓だという。よく見れば、地面に墓石が整然と並んでいた。

サンタモニカビーチで羽を休める鳥
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ベトナム戦争でアメリカ兵は5万人以上が戦死したそうだ。生きて帰ってきた兵士たちの中には、心を病みアディクションを抱える人も多いという。
旅の後半になって知ったことなのだが、実は案内人のデイビット氏の兄も、いまなおアディクションで苦しむ一人だという。
アメリカの心の治療が世界的にも進歩しているのは、それだけアメリカが病んでいるからに他ならないのだ、ということを実感した。
ロスでは、18歳から25歳までと推定される身元不明の死体が1日に30体は出るのだということを、水澤氏は繰り返し話していた。
変化することを拒まない国
アメリカ滞在初日の夜、参加者が自己紹介をしながらデイビット氏が語っていた言葉が印象に残った。
「アメリカは『チェインジング(変わること)』が簡単な国です。夫や妻を変えるのも、仕事を変えるのも、住む場所を変えるのも、習慣や方針を変えるのも。だからアディクションの治療法もどんどん新しいものを取り入れ変えていきます。でも、日本は『チェインジング』が難しい国だと思う。歴史的な伝統や文化があるから。しかしそれが、日本のアディクションの治療の難しさにもつながっているのではないかと僕は思う」。
日本でアルコール依存症をはじめとするアディクションの治療がなぜ難しいのか。私はその後、一緒に参加した精神科医との会話からも、その一因を知ることになる。
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